がん治療センター

卵巣がん

卵巣がんについて

卵巣がん罹患数は毎年約7,000人以上と推定され、年々増加傾向にあります。
卵巣はお腹の中にある臓器のため、がんが発生しても初期には無症状であることが多く、腫瘤が大きくなれば下腹部のはりやしこりとして触れる、膀胱の圧迫により尿が近くなる、下腹痛や腰痛などの症状が出現します。まれに月経不順や不正性器出血をきたすこともあります。約半数の人は、がんがお腹の中に散らばった状態や腹水がたまった状態で発見されます。

決まった検診法はありません

卵巣がんには子宮がんのような決まった検診法がないため、早期発見のためには子宮がん検診の際に、卵巣のはれがないかどうかを内診や超音波検査で調べることが重要です。また卵巣がんの発生には家族内に卵巣がんの方がいる場合や、不妊症、お産の経験がないことなどが関連していますので、そのような方は特に注意が必要です。

診断方法

内診や超音波検査で卵巣の腫れが見られた場合には、CT検査やMRI検査で卵巣の性状や周囲への広がりを検索します。胃や腸の病気で卵巣が腫大することもありますので、消化管の検査を行うこともあります。
卵巣はお腹の中にある臓器のため、診断は手術で摘出した卵巣を顕微鏡で確認する病理検査により確定します。

  • 正常な卵巣

  • 卵巣がんの一例

治療の主体は手術と抗がん剤

卵巣の腫瘍には良性と悪性(がん)とその中間の境界型の3つがあります。卵巣の腫れが見つかった場合、良性か境界型か悪性(がん)かの診断は最終的には手術で摘出し、顕微鏡で検査しなければわかりません。 通常6cm以上の卵巣の腫れがあれば手術が必要になります。

手術で良性と診断された場合には腫瘍の部分のみを摘出し、正常の卵巣部分を残す場合もあります。境界型および卵巣がんの場合の基本術式は、子宮、卵巣、卵管を摘出すること、および腸の表面を覆う大網という脂肪の膜を摘出することです。

さらに、病変の広がりを確認するため、骨盤内や腹部の大動脈周囲のリンパ節を摘出することもあります。またお腹の中に散らばった腫瘍を可能な限り摘出し、そのために腸の一部を切除することもあります。

以上が手術の原則ですが、今後の妊娠を強く希望される方の場合、がんの広がりの程度やがんの種類によっては、子宮や反対側の卵巣、卵管を残して、妊娠の可能性を残すような手術を行うこともあります。

卵巣がんの治療は手術と抗がん剤を2本柱とした集学的治療です。がんが卵巣を超えて周囲に広がっている場合には、たとえ手術でとりきれていても術後に抗がん剤投与を行います。卵巣がんは、抗がん剤が比較的よく効くがんのひとつです。卵巣がんの抗がん剤にはいくつかの種類があり、がんの種類によって用いる抗がん剤、投与経路、投与間隔が異なります。最も多く用いられる抗がん剤はタキソールとパラプラチンで、3週間に1回、ないしは毎週投与で3週間を1クールとして3~6クール投与します。抗がん剤の治療は原則として外来通院で行っています。抗がん剤の主な副作用は吐き気、脱毛、しびれ、アレルギー反応、白血球や赤血球、血小板の減少などがありますが、副作用に対する薬が多く開発されており、予防的に投与することにより以前に比べ副作用は軽減されています。

文責:産婦人科 坂井 邦裕

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