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循環器内科 - ペースメーカー

ペースメーカーによる徐脈の治療について

心臓は電気信号の伝導により収縮し、ポンプの機能を果たしていますが、ご自身の心臓がうまく電気信号を作れなくなると、脈が遅くなってしまいます(徐脈)。脈が遅くなりすぎた分をペースメーカーが心臓に電気信号を送り、補います。

リードレスペースメーカー

◆経静脈ペースメーカー(通常のペースメーカー)

ペースメーカーは、リードといわれる電線とリードを通して心臓の脈を制御する本体(および電池)のジェネレーターという機械からなります。前胸部に機械本体を植え込み、静脈を通して心臓までリード線を挿入していきます。ペースメーカーが心臓の鼓動の不足を検知すると、電気的刺激を心臓に送ります。

◆リードレスペースメーカー

リードレスペースメーカーはその名の通り、心臓につなぐリード(電線)がありません。心臓の中に従来型と同様の機能を備えたカプセル型機械(直径6.7ミリメートル、長さ25.9ミリメートル、重さは1.75グラム)を留置するだけで、鎖骨下に「ポケット」を形成する必要がありません。心臓ペースメーカーは長年、技術向上や機械の小型化が図られてきましたが、ジェネレーターが不要になりポケット作成が不要であるという点で画期的な機械です。専用のカテーテルと呼ばれる大腿静脈から血管を通じて心臓の右心室へ挿入する管を用いて留置します。本体を心筋へ密着させるために本体先端の形状記憶合金の爪(タインと呼びます)によって固定し、脱落を予防します。
心臓内に留置された本体は経年とともに内膜で覆われるため電池寿命が尽きても取り出すことはできません。電池寿命がきた場合は2つめを追加留置する必要がありますので、基本的には高齢の患者さんが適応となります。
徐脈性不整脈の全ての患者さんに適応となるわけではありません。従来型は右心房、右心室に2本のリードを留置し、右心房のペーシングを行うことが可能ですが、リードレスペースメーカーは右心室にひとつ留置するだけで心房のペーシングはできません。そのため、心房のペーシングが病態的に必要な患者さんにとっては従来型のペースメーカーの方が望ましい場合もあります。

植え込み型除細動器(ICD)について

心室頻拍や心室細動などの、突然死の原因となるような不整脈(致死性不整脈)に対して植え込む医療機器です。不整脈を自動で検知して、危険な不整脈と判断すると電気ショックによる治療を行います。心臓の機能が悪い人などはこの機械により、生存期間が延びることが報告されています。ペースメーカー機能も有しており、徐脈にも対応します。

両心室ペーシング機能付き植え込み型除細動器(CRT-D)について

両心室ペーシング機能付き植え込み型除細動器
  • 1. 重症心不全においては、心臓の拡張にともない、心臓刺激伝導系の障害が起こることが多々あります。心臓の部位によって収縮のタイミングがずれると、効率良く心収縮ができなくなります(心臓同期不全)。この同期不全を是正し心収縮を効率良く行うことで心機能を改善する治療法を心臓再同期療法(CRT: Cardiac resynchronization therapy) といいます。
  • 2. 心室の2ヶ所(右心室、左心室)から刺激を加えることにより、収縮のタイミングのずれを少なくします。CRTとは、心不全の根治治療ではなく、心臓内の収縮のタイミングのずれをペースメーカーで補正(resynchronization)することで、心臓収縮の効率を良くし、心臓の負担を軽減させる治療です。
  • 3. CRTの治療により、心臓のポンプ機能が改善する場合があります。残念ながら全例では有りませんが、およそ7割程度の患者さんに心不全の改善効果が認められます。
  • 4. また、心機能が低下した症例では、心室頻拍、心室細動といった致死的な不整脈が出現し、突然死につながることがあります。心機能が低下した症例では、植え込み型除細動器(ICD)による治療が、突然死を減少させ、生命予後を改善させることが知られています。両心室ペーシング(CRT)を行う必要があるほど心機能が低下した症例では、突然死の可能性を減らすために、除細動器機能がついたもの(CRT-D)をお勧めしています。
  • 5. 植え込み型除細動器(ICD)は、不整脈発作が起こった場合に自動的にそれを感知し、1)頻回刺激、2)電気ショック、によって不整脈を停止させる植え込み型の機械です。

皮下植え込み型除細動器(S-ICD)について

皮下植え込み型除細動器

従来の植え込み型除細動器(ICD)は静脈を通して心臓の中までリード線を植え込みます。皮下植え込み型除細動器(S-ICD)は皮下のみにリード線、本体を植え込むものです。体の奥までリード線を入れる必要がなく、耐久性にすぐれるという利点があります。しかし、ペースメーカーの機能が使えないため、病状に合わせて選択します。

経皮的リード抜去について

経皮的リード抜去

ペースメーカー、ICD, CRT-Dといった心臓デバイスは一度感染を起こすと、全部取り出さなければ根治しません。しかし、心臓の中に植え込まれたリード線は血管や心臓と癒着するため、簡単には取り出せなくなります。従来は開胸手術で取り出していましたが、最近は技術、機器の進化により、カテーテルでリードを抜去する方法も出てきています。当院では早期からこの治療法に取り組み、100例以上の実績があります。しかし、血管損傷、心損傷を起こす可能性があり、急変のリスクが高い手術のため、適応を選んで行なっています。

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