大動脈弁狭窄症について
心臓の大動脈弁が硬くなり、開きにくくなる疾患です。
心臓は、全身に血液と酸素を供給するポンプの役割をしています。全身に酸素を届けたあとの血液(静脈血)は右心房から右心室へ戻り、肺動脈から肺に送られます。肺で酸素を受け取った血液(動脈血)は左心房から左心室へ送られ、大動脈を通って全身をめぐり、酸素を届けます。
血液の流れを一方向に維持するために、心臓内の4つの部屋にはそれぞれ“弁”があります。


「大動脈弁狭窄症」は心臓の出口にある大動脈弁の開きが悪くなり、血液の流れが妨げられてしまう疾患です。病状が進むと動悸や息切れ、疲れやすさなどの症状が現れ、重症になると失神や突然死に至る可能性もあります。
TAVIについて
TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)は
カテーテルを用いて弁を取り換える治療法です。
大動脈弁狭窄症に対する治療法は症状の進行度合いによって変わってきます。軽症の場合は、薬で症状を緩和したり経過観察を行いますが、重症の狭窄に対する治療法は弁を取り換えることになります。標準的な治療法は「大動脈弁置換術」という開胸手術ですが、高齢や合併症などの理由で手術をあきらめていた方に対する新しい治療法としてTAVIが開発されました。

TAVIのアプローチ法
TAVIには2通りのアプローチがあります。太ももの付け根の血管から挿入する「経大腿アプローチ」、心臓の先端(心尖部)から挿入する「経心尖アプローチ」です。80~90%の手術で経大腿アプローチが可能です。
- TF経大腿アプローチ
動画提供:エドワーズライフサイエンス株式会社
TAVIのメリット
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- 体への負担が少ない
- 開胸することなく、また心臓も止めることなく、カテーテルという医療用の細い管を使って人工弁を患者さんの心臓に留置します。開胸手術に比べて体への負担が少ない治療法です。
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- ご高齢の方も治療可能
- ご高齢のために体力が低下している方や、その他の疾患のリスクを持つなど、手術が困難な患者さんも治療の選択肢の一つとして選べるようになりました。
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- 入院期間が短い
- 低侵襲(治療のために患者さんの体を傷つける度合いが少ないこと)に加えて、人工心肺を使用しなくて済むことから、比較的入院期間が短く早期に社会復帰が可能です。
当院の体制
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- 診療科を超えた安心のチーム体制
- 循環器内科医、心臓血管外科医、血管外科医、麻酔科医、看護師、放射線技師、臨床工学技士、検査技士、理学療法士など、それぞれの職種のスペシャリストがチームで連携して治療にあたります。
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- ハイブリッド手術室
- 手術台とX線映像装置を組み合わせた高機能な手術室を完備しています。
- 医師紹介
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大井 啓司
チームで連携して治療にあたります。
再製造単回使用医療機器の使用について
当院は地球環境への配慮と医療費削減の観点から、患者さんの治療に再製造単回使用医療機器を使用する場合があります。→ 再製造単回使用医療機器の使用に関する詳細はこちら
よくあるご質問
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- 希望すればTAVIを受けることができますか?
- TAVIはご高齢で体力が低下している方や、他の合併疾患があり、外科的手術が困難な患者さんが対象となります。TAVI 治療の必要性につきましては、検査を受けていただいた上で当院の専門の医療チームで検討します。
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- 治療による痛みはありますか?
- 基本的に治療は全身麻酔をかけて行われますので、痛みを感じることはありません。
治療後にカテーテルを挿入した太ももの付け根に不快感があったり、経心尖アプローチの場合には、傷口の痛みが残ることがあります。全身麻酔の場合は術後にのどに違和感をおぼえたりすることがあります。これらは数日から一週間でおさまります。
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- 入院期間はどのくらいですか?
- 術後の状態によって前後することもありますが、入院から退院まで10日程度です。
手術の翌日から患者さんの状態に合わせて理学療法士がリハビリテーションを行います。食事も朝からとることができます。
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- 費用はどれくらいですか?
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2013年の10月よりTAVI治療が健康保険の適用となりました。
高額療養費制度で自己負担額を軽減することができますが、
年齢や所得によって異なりますので、詳細は下記のリンクよりご確認ください。※オンライン資格確認システム導入に伴い、限度額認定証の情報は原則自動取得いたします
またTAVI治療は更生医療(自立支援)制度の対象となります。
更生医療の申請により自己負担額がさらに軽減される場合があります。
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- 年齢に関係なくTAVIを受けられますか?
- TAVIが開始されてからまだ10年程度しか経っておらず、それ以上の長期成績がまだ明らかではありません。そのため、現在では高齢でない患者さんであれば通常、長期成績も担保されている開胸手術が標準治療となります。しかし、これまで何度か開胸手術を受けたり、手術の危険性が高い方などは、TAVIの適応が検討されます。
TAVIに関する
お問い合わせはこちら
- 福岡県済生会福岡総合病院
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092-771-8151
受付時間:月〜金、8時30分〜17時