診療科・部門一覧

循環器内科 - カテーテルアブレーション

不整脈とは

心臓は電気信号の伝導により収縮し、ポンプの機能を果たしています。洞結節(どうけっせつ)というところで電気信号が作られ、中継地点(房室結節)を通って、心臓全体に伝わります。洞結節は安静時であれば、1分間に60回~70回くらいの頻度で、自動的に、規則正しく電気を作ります。
このリズムが乱れたり、リズムが一定でも非常に速かったり遅かったりすることを、不整脈といいます。不整脈は、脈が早くなるもの(頻脈)と遅くなるもの(徐脈)に分類されます。

◆脈が早くなるタイプの不整脈(頻脈)の治療

頻脈性不整脈の治療は、大きく分けて、

  • ①内服薬による治療
  • ②カテーテルによる治療
  • ③植え込み型デバイス(ICD, CRT-D)による治療

に分かれます。カテーテルにより不整脈の原因となる部位に熱を加えて、不整脈を起こらないようにする方法をカテーテルアブレーションといいます。主に薬が効きにくい不整脈が治療の対象になりますが、薬の副作用も考慮しながら、適応を判断します。

◆脈が遅くなるタイプの不整脈(徐脈)の治療

徐脈に対する特効薬はなく、基本的にはペースメーカーによる治療が必要となります。

カテーテルアブレーションとは

カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)とは、頻脈性(脈が早くなる)の不整脈に対して行われる治療法で、不整脈の原因となっている部位に熱を加え、異常な電気信号を止めます。 当院では、不整脈の電気の流れを分析しアブレーションを行う部位を特定する最新の3Dマッピングシステムを導入し、治療に役立てています。

電気生理学的検査

◆電気生理学的検査

不整脈を治療するためには、不整脈を正しく診断する必要があります。12誘導心電図は不整脈を予測するのに役に立ちますが、細かな治療法の決定には、カテーテルを用いた詳しい検査が必要です。首(内頸静脈)と足の付け根(大腿静脈)の血管から、心臓にカテーテルを挿入し、電気の信号を記録します。不整脈をわざと起こして、電気信号の発生や伝達の状況を観察します。

◆カテーテルアブレーションによる不整脈の治療

電気生理学的検査によって、不整脈の原因が判明した場合、その部分に局所的に熱を加えることで不整脈を治療します。発作性上室頻拍、WPW症候群、通常型心房粗動、心房頻拍、特発性心室頻拍といった不整脈では、カテーテルアブレーションの成功率が90%以上と高く、効果的です。
3D Mapping System (CARTO3, Ensite NAVIX, Rhythmia)は心臓の中の電気信号を記録すると同時に、GPSと同様の原理で磁界を用いてカテーテルの正確な位置を割り出すことで、心臓の立体画像を構築します。CTの画像を取り込んで、3次元的に分かりやすく位置情報を解析することができます。新しい技術の進歩により正確な診断と治療が可能となっています。放射線透視の使用量を減らすことができます。

3D Mapping System
図左:3D Mapping System (Rhythmia)による左心房のmapping。左肺静脈が不整脈の原因であると診断できます。
図右:カテーテルの先端には圧センサーが付いており、どれくらいの強さで心臓と接しているかを数値化できます。安全で正確な治療に役立ちます。

◆心房細動に対するカテーテルアブレーション

心房細動とは

心臓は全身に血液を送り出すポンプの働きをしていますが、適切なタイミングで心房、心室が収縮できるように、電気刺激の伝達によって調節されています。正常な状態では洞結節より発せられた電気的命令が心房、房室結節に伝わり、心室全体へと広がっていきます。しかし、心房細動となると、心房がバラバラに(無秩序に)興奮してしまうため、脈が乱れ、速くなったり遅くなったりします。
心房細動になると、有効な心房収縮が得られなくなり、ポンプ機能が10~20%低下すると言われています。また、心房のなかでの血液の流れが悪くなるため、血栓が出来やすくなり、脳塞栓の原因となります。

心房細動に対するカテーテルアブレーション

心房細動に対する治療は

  • ①心房細動にならないようにする治療
  • ②心房細動のままで脈拍を調整する治療

大まかには上記の2つに分かれ、カテーテルアブレーションは①に属します。心房細動が持続すると心房の変性が起き、さらに心房細動になりやすくなります。何年も心房細動が持続すると、正常の脈に戻らなくなってしまうため、それぞれの患者さんの病態、症状に合わせて治療法を選択していきます。

心房細動のメカニズムは未だ未解明の部分も多いですが、左心房にある肺静脈が大きく関わっていることが分かってきました。肺静脈、または肺静脈周囲からの異常な電気的興奮が、心房細動発生の一つのきっかけとなっているケースが多く見られます(80~90%)。

発作性心房細動、持続性心房細動でのカテーテルアブレーションの目的は、焼灼により肺静脈からの異常な電気的興奮が心臓に伝わらないようにすることです(肺静脈隔離:下図参照)。

肺静脈隔離は、現在、広く一般的に行われている治療法であり、当院でも一回目の治療では基本的にはこの方法を採用しています。しかし、心房細動の原因は単一のものではなく、複数の要素がからみあっているため、発作性心房細動のカテーテルアブレーション後の再発率は1年で10%程度です。心房細動が持続している場合は再発率が増加し、2回目、3回目のアブレーションが必要となることもあります。

肺静脈隔離

カテーテルアブレーションの方法

  • ・術時間は約2~3時間で局所麻酔にて行う治療法です。術中は仰臥位で、原則的に体は動かせません。治療途中から、痛み止めの注射を行いますので、意識が混濁することがあります。
  • ・足の付け根(鼠径部)と右首を消毒後、局所麻酔を行い、静脈を通してカテーテルを入れていきます。静脈から入れたカテーテルは右心房に到達します。右心房と左心房の間は壁(心房中隔)で隔てられていますので、針で刺して、左心房にカテーテルを2~3本挿入します(心房中隔穿刺)。
  • ・鼻から食道の温度を測定する温度計を挿入します。
  • ・放射線透視を使いながら、カテーテルを操作します。
    基本的には目が覚めた状態ですが、鎮痛剤や鎮静剤を使用して痛みがないようにしていきます。
  • ・手技終了後、刺入部の出血が止まるまで、数時間の安静臥床が必要です。
  • ・クライオバルーンアブレーションは亜酸化窒素ガスを用いた冷凍凝固による治療法で、バルーンで肺静脈を冷却することで肺静脈隔離を行います(下図参照)。高周波を用いた治療法と成功率に差はなく、心臓の形によりどちらの治療法が適しているかを選択します。発作性心房細動にしか適応がなく、心房細動が続いている場合は高周波カテーテルによる治療を行います。
冷凍アブレーション(クライオアブレーション)
ページTOPへ