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整形外科 - 下肢関節外科

下肢関節外科

下肢関節外科は、九州大学整形外科膝関節班・足の外科班のチーフとして勤務した水内が、豊富な経験を生かして膝および足に関する疾患・スポーツ外傷等を主に行っております。関節痛や変形を伴う変形性関節症や関節リウマチなどの疾患に対して、膝関節は人工膝関節置換術、矯正骨切り術を、足関節は足関節固定術、人工足関節置換術、矯正骨切り術を行っております。また外反母趾やハンマートゥなどの足趾変形に対しても、数多くの手技をもって手術を行っております。2021年4月より石橋も関節外科を担当し、股関節・膝関節の治療にあたっております。

医師紹介


整形外科 主任部長

水内 秀城(みずうち ひでき)

専門      膝関節外科・足の外科・スポーツ外傷
主な経歴    1999年     九州大学医学部卒業
2000年     九州大学整形外科入局
2000ー03年  九州大学病院および関連病院にて研修
2003ー06年  九州大学大学院医学系学府機能制御医学専攻(医学博士)
2007ー10年    米国留学(Shiley Center for Orthopaedic Research and Education at Scripps Clinic,
             La Jolla, CA, USA)
2010ー12年  下関市立中央病院整形外科(医長)
2012ー19年  九州大学病院整形外科 (助教)
2019ー20年  九州大学病院整形外科 (講師)
2020ー21年  福岡県済生会福岡総合病院 整形外科 (関節外科主任部長)
2021年ー    福岡県済生会福岡総合病院 整形外科 (整形外科主任部長)
学会資格など  日本整形外科学会(専門医・認定スポーツ医・認定運動器リハビリテーション医)、
日本人工関節学会(教育研修委員・評議員・認定医)、
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(評議員)、日本コンピュータ外科学会(評議員)、
日本CAOS研究会(世話人)、膝関節フォーラム(世話人)、九州膝関節研究会(世話人)、
九州Osteotomy研究会(世話人)、American Academy of Orthopaedic Surgeons (米国整形外科学会)、
日本足の外科学会、日本骨折治療学会、日本臨床バイオメカニクス学会、日本リハビリテーション医学会、
日本リウマチ学会、西日本整形・災害外科学会 など

整形外科 部長

石橋 正二郎(いしばし しょうじろう)

専門      膝関節外科・股関節外科
主な経歴    2009年     福岡大学医学部卒業
2011年     九州大学整形外科入局
2012年     別府医療センター 整形外科
2014年     九州医療センター 救急科
2015ー19年  田川市立病院 整形外科
2019ー20年  九州大学大学院医学系学府整形外科 研究生
2021年ー    済生会福岡総合病院 整形外科 (部長)
学会資格    日本整形外科学会(専門医)、日本股関節学会、日本人工関節学会、日本骨折治療学会、         
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会 など



    変形性膝関節症

変形性膝関節症は、膝の骨どうし(大腿骨<もも骨>と脛骨<すね骨>)がぶつからないよう、クッションの役割を果たす関節軟骨が変性し摩耗することで、変形や痛みが生じる疾患です。骨どうしがぶつかると強烈な痛みを生じます。主な原因は加齢であるため、高齢者になるほど罹患率は高くなります。
はじめは立ち上がりや歩き始めといった動作開始時のみの痛みであり、体重をかけなければ痛みはなくなりますが、徐々に正座や階段の昇り降りが難しくなり、症状が進んでしまうと、安静にしていても痛みがとれず、変形(多くはO脚です)が目立ち、膝がピンと伸びず、歩行が困難になるため、日常生活にかなりの支障をきたしてしまいます。

症状が軽い場合は抗炎症作用のある内服薬(痛み止め)や外用剤を使ったり、関節内にヒアルロン酸の注射などをしますが、症状が改善しない場合は手術による治療を行います。


<X線(レントゲン)による分類>

 下の写真は左膝関節のレントゲンです。骨の間にある<すき間>を関節裂隙と呼び、主に軟骨の厚みを示しています。
 病期が進行するにしたがって軟骨が摩耗するため、関節裂隙が狭小~消失します。


    変形性膝関節症
    変形性膝関節症に対する手術療法

   変形・変性の程度によって、術式を決定します。


  ●膝関節鏡

   関節軟骨同様にクッションの役割をもつ半月板の損傷が主な原因の場合、関節鏡という内視鏡を用いて処置を行います。
   損傷した半月板を部分的に切除することで症状を軽減できるだけでなく、その他症状に関連する所見(滑膜炎など)を直接観察する
   ことで、必要であれば処置を行い、さらなる症状の改善を見込みます。




  ●高位脛骨骨切り術

  • 高位脛骨骨切り術

            術前          術後

内側の関節軟骨は変性し摩耗しているのに対して、外側の関節軟骨は変性が少ない場合に適応(主に初期から進行期)となります。膝がO脚となっており、体重の負担が内側に集中している状態を、脛骨(すね骨)の一部を斜めに骨切りし、体重の負担が外側の関節面にかかるように矯正(いわゆるX脚)する手術です。手術前の計画で決定された矯正角度となるように内側を開いた状態とし、開いた後の空隙には人工骨を挿入し、骨切り部分はプレートとスクリューで固定します。
患者さんの膝関節を温存するため、手術前の膝の動き(可動域)が悪くなることが少なく、手術後も正座が引き続き可能だったり、スポーツや農作業などの仕事へ復帰される患者さんが多くいます。骨が癒合する(しっかりくっつくこと)まで痛みが多少続きますので、機能回復のためにしっかりとリハビリを行うことがとても重要です。






  ●人工膝関節置換術

  • 人工膝関節置換術

             術前         単顆置換術        全置換術

関節軟骨の変性や摩耗が著明であり、可動域(膝の曲げ伸ばし)制限や不安定性のために、関節の滑らかな動きが障害されている場合に適応(主に進行期から末期)となります。関節の表面を人工関節に入れ替えることで、骨どうしがぶつかることで起こる強烈な痛みはなくなります。人工関節は大腿骨(もも骨)、脛骨(すね骨)、膝蓋骨(お皿の骨)に設置します。大腿骨と脛骨は傷んだ関節軟骨とその下の骨を人工関節の形にあわせて切除し、人工関節(金属)を設置します。大腿骨と脛骨間にある隙間にはポリエチレンインサートという軟骨の代わりになるものを挿入します。また膝蓋骨は表面の骨切り後、ポリエチレンを挿入します。金属を置換するだけでなく、体重が膝関節の中心を通過するように脚を真っすぐ、正確に骨切りを行う必要があります。

   人工関節置換術には、傷んだ半分の関節(内側もしくは外側)のみを入れ替える単顆置換術とすべての関節を入れ替える全置換術
   あります。リハビリは可能であれば手術翌日から立って歩くこともできます。脚が真っすぐになり、腫れや熱がひけばほとんど痛み
   が気にならなくなります。近年は手術手技の向上や人工関節のデザイン・材質が改良されており、術後10-15年で入れ替えの手術が
   不要な方がほとんどです。


   人工関節置換術や骨切り術に対しては、術前にコンピュータ上でCADソフトを使用し、『3次元骨モデル』を用いた綿密な計画を行
   うことで、患者さんに応じた手術方法やインプラントの選択をしっかりと検討しております。加えて人工膝関節置換術では術中にコ
   ンピュータナビゲーションシステムを利用し、高い精度・正確性をもった手術を実現しております。


    3次元術前計画

   高位脛骨骨切り術や人工関節置換術は除痛効果に優れた手術ですが、より高い膝関節機能や良好な長期成績を獲得するためには、骨
   を切る方向やインプラントの設置位置など高い精度が求められるため、正確かつ綿密な術前計画(設計図)が必要です。ほとんどの
   施設がX線(レントゲン)画像を用いた設計図のみですが、2次元的な評価であるため、精度に限界があるのが現状です。
   当科ではさまざまな画像を駆使して骨モデルを作製し、コンピュータ上で3次元的に患者さんに応じた手術方法やインプラントの選
   択を綿密に計画しております。


  ◎人工膝関節置換術

    人工膝関節置換術

        (Mizu-uchi H, Colwell CW Jr, et al. J Arthroplasty. 2011)        (Mizu-uchi H, Colwell CW Jr, et al. J Arthroplasty. 2012)



  ◎高位脛骨骨切り術

    人工膝関節置換術

          (Teng Y, Mizu-uchi H, et al. Arthroscopy. 2021)



  
    コンピュータナビゲーションシステム

   術前計画を正確に実施するためには正確かつ精度の高い手術手技が必要です。
   特に人工関節置換術は、正確な骨切り・インプラント設置に加えて、良好な靭帯バランス(ぐらつきのない膝)の獲得が非常に重要
   となります。現在当科ではコンピュータナビゲーションシステムを用いて従来の手術手技と比較して精度の高い手術を行っておりま
   す。


    コンピュータナビゲーションシステム

   ◆ナビゲーションが理想の骨切り位置・インプラント設置位置を誘導し、従来の方法より正確性の高い手術を実現することは、これ
    までに多くの発表・論文で報告されています

     (Mizu-uchi H, Matsuda S, et al. J Bone Joint Surg Br. 2008)
     (Mizu-uchi H, Matsuda S, et al. J Arthroplasty. 2009)
     (Kuwashima U, Mizu-uchi H, et al. J Orthop Sci. 2017)
     (Mizu-uchi H, Kido H, et al. J Knee Surg. 2021)



    コンピュータシミュレーション

       人工関節置換術や骨切り術において、術後膝関節機能に影響を与える様々な因子の検討を水内はコンピュータシミュレーションを用い
       て多く行ってきており、学会・論文発表を通じて、国内外に有用な情報を発信しております。


コンピュータシミュレーション01






運動中にどれだけの体重が膝関節にかかるか?
(Mizu-uchi H, Colwell CW Jr et al. J Arthroplasty. 2015)



コンピュータシミュレーション02




   スムーズに膝関節が動くための運動解析
   (Okamoto S, Mizu-uchi H, et al. J Arthroplasty. 2015)
   (Hada M, Mizu-uchi H, et al. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2018)
   (Hada M, Mizu-uchi H, et al. Bone Joint Res. 2020)


    コンピュータシミュレーション03
コンピュータシミュレーション04


正確に人工関節を設置するために、どのような指標を用いればよいか?
(Ushio T, Mizu-uchi H, et al. J Arthroplasty. 2017)
(Ma Y, Mizu-uchi H, et al. Arch Orthop Trauma Surg. 2018)
(Ma Y, Mizu-uchi H, et al. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2019)



    変形性足関節症01
変形性足関節症02

変形性足関節症は、変形性膝関節症同様に、足首を構成する骨どうし(脛骨と距骨)がぶつからないよう、クッションの役割を果たす関節軟骨が摩耗することで、変形や痛みが生じる疾患です。主な原因は変形性膝関節症の加齢と異なり、これまでに捻挫をよく繰り返していたり、足首の骨折をしたことがある方に多い傾向にありますが、明らかな原因がなく発症することもあります。 症状は足首の痛みであり、体重をかけることで増強します。見た目も足首の腫れや変形(内反:内側に傾くこと、外反:外側に傾くこと)を認めます。
症状が軽い場合は抗炎症作用のある内服薬(痛み止め)や外用剤を使ったり、足底挿板(インソール・靴の中敷き)を用いて荷重バランスを変えたり、関節内に炎症止めの注射などを行います。
症状が改善しない場合は手術による治療を行います。
手術は足関節鏡による滑膜切除・下位脛骨骨切り術・足関節固定術・人工足関節置換術
などがあり、症状の進行や年齢・活動性により選択されます。

    外反母趾01

外反母趾02

外反母趾は、足の親指(母趾)が外側に曲がった変形を認める疾患であり、変形によって母趾内側の骨の出っ張り部分が靴に当たるなどして疼痛を引き起こすものです。足の裏に胼胝(タコ)ができて疼痛を引き起こしたり、母趾が隣の足趾に潜り込むなどして第2趾や第3趾にも変形や疼痛を引き起こすこともあります。
男性と比較すると女性に多く、加齢やハイヒールなどの先が細い履物などが影響します。症状が軽い場合は靴使用の工夫、抗炎症作用のある内服薬(痛み止め)や外用剤を使ったり、装具療法として、足底挿板(インソール・靴の中敷き)や外反母趾矯正装具を用いたりします。足の筋力訓練・体操もよく勧められます。
手術は多くの方法がありますが、主に母趾の骨(中足骨)に対して矯正骨切りを行う方法が行われています。



<インソール作製>

 当科では、手術のみならず、扁平足やO脚・X脚などの下肢障害の治療として、足底板(インソール)の作製を理学療法士の野田を中心
 に、一人一人の足にあわせてすべて手作りで行っております。


    関節鏡を用いた手術

関節鏡を用いた低侵襲手術も多く行っております。膝関節半月板損傷や十字靭帯損傷、足関節外側靱帯損傷(繰り返す捻挫の主な原因です)、離断性骨軟骨炎・距骨骨軟骨損傷・三角骨障害などの「スポーツ外傷・障害」や、膝・足関節炎に対する滑膜切除術など、多くの疾患に対して対応可能です。



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