がん治療センター

がん治療支援(がんと診断された時から始まる緩和ケア)

緩和ケアについて

緩和ケアとは

これから治療を受けられる患者さん、または現在すでにがん治療を受けていらっしゃる患者さんのなかには、がんによる苦痛症状をお持ちの場合があります。身体的なつらさが精神的なつらさにつながることも多く、がん治療への意欲や意思決定に悪い影響をおよぼすこともあります。このような苦痛症状はご本人だけでなく、ご家族への負担をおよぼすことも考えられます。日本緩和医療学会では、「緩和ケアとは、重い病を抱える患者やその家族一人一人の身体や心などの様々なつらさをやわらげ、より豊かな人生を送ることができるように支えていくケア」と明記されています。

これまでのがん治療に関する医療体制は、抗がん剤治療、放射線治療、手術などの積極的治療を中心に発展してきた経緯があり、「苦痛症状の緩和は積極的な治療法がなくなってから行うもの」と考え、症状緩和に関してはホスピスや緩和ケア病棟専門医任せにしている傾向がありました。しかし、現在ではWHO(世界保健機構)で定義されているように、緩和ケアは積極的ながん治療と並行して早期から提供されるべきものであると提言されています。
我が国でも、2012年6月に見直された「がん対策推進基本計画」において、緩和ケアは「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」として、引き続き重点的に取り組むべき課題として掲げられ、より早い時期から適切に緩和ケアを提供していく体制を整備することが求められています。厚生労働省より2014年1月10日、「がん診療拠点病院等の整備に関する新たな指針」が通知され、当院ではこれに準じた緩和ケアに取り組んでいます。

当院のがん治療支援への取り組み

当院は、主にがん治療を開始されたばかりの患者さんや、きびしいがん治療を継続して受けていらっしゃる患者さんの積極的がん治療を担当する、急性期病院という役割を受け持っています。
そのような中では、がんの症状や精神的苦痛にお悩みの患者さんに対して、緩和ケアの専門医に頼るのではなく、がん治療医自らががん治療と並行して早期からの緩和ケアを提供できる体制が必要となります。そのためには、医療従事者全てが、緩和ケアの啓発、教育、普及、および緩和ケアに関する迅速な情報の提供を受けることが必要です。
またがん患者さんの痛みは「トータルペイン」と呼ばれ、単に身体的な苦痛だけでなく、心理的、社会的、スピリチュアルな苦痛が互いに影響しあっている複雑なものですので、薬剤による緩和ケアだけでなく、専門性を活かしたいろいろな職種による総合的、全人的なアプローチが重要です。
以上のことから、当院では「急性期病院での患者さんに優しいがん医療体制の充実」を目的として、2006年に済生会福岡総合病院・緩和ケアチーム(PCT:palliative care team)を発足させました。なお2017年度より、がん治療サポートチーム(CST:Cancer Survivor Support Team)と名称を変更しております。

がん治療サポートチーム(CST:Cancer Survivor Support Team)

がん治療サポートチームの構成員

がん治療サポートチームは多職種からなる専門グループです。

  • ・身体症状緩和担当医師(外科医師・内科医師・婦人科医師)
  • ・精神症状緩和担当医師(心療内科医師)
  • ・緩和ケア担当薬剤師
  • ・緩和ケア担当の入院・外来看護師
  • ・臨床心理士
  • ・理学療法士
  • ・管理栄養士
  • ・ソーシャルワーカー(医療相談員)
  • ・地域医療連携室など

緩和ケアチームの活動内容

  • 1.がん治療に伴う身体、精神的苦痛の症状緩和
  • 2.医療用麻薬の適正使用と副作用対策
     ・外来・入院患者の自己管理指導
     ・クリティカルパスを用いた医療用麻薬の導入
  • 3.スクリーニングシートを用いて対象者の抽出・掌握と迅速な対応
  • 4.主治医.多職種間での情報の共有化
  • 5.連携医療機関との連携
  • 6.全医療者対象の緩和ケアの基本的知識と技術の習得を目的とした「緩和ケア研修会」(PEACEプロジェクト)
     【当院の緩和ケア研修会修了者はこちら】(PDF)
  • 7.疼痛治療のマニュアル作成
  • 8.福岡市近郊の病院間で開催されている各種緩和ケアカンファレンスへの出席

また患者さんのご了承を得た上で、主治医から依頼された患者さんに関しては、週に1度のCSTチームによるカルテ回診とカンファレンスを行い、情報を多職種間で共有しながら早期からのサポートを行っています。ベッドサイドに直接お伺いして、面談・診察も行っています。治療にひと段落がついて退院された患者さんに対しては、外来での症状緩和の継続を行います。医療ソーシャルワーカーや地域医療連携室を通じて、かかりつけ医の先生方との連携により、個々の患者さんの情報を共有し、症状緩和の継続を実施しています。

今後の展望

今後の済生会福岡総合病院・CSTチームの活動の展望としましては、「緩和ケア=ターミナルケア」と呼ばれた時代に終焉を告げ、「がん治療の一環としての早期からの緩和ケア」を基本として、緩和ケアに関する知識や技術を身につけた医療従事者を育成し、すべてのがん患者さんに、適切で良質な医療を提供することを目指して活動を続けていきます。

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