医療関係者の方へ

セミナー

第28回 21世紀循環器セミナー 2015年6月12日(金)

時下、先生方におかれましては、益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、下記の要領にて、第28回 21世紀循環器セミナーを開催することとなりました。ご多忙中とは存じますが、万障お繰り合わせの上、ご出席下さいます様ご案内申し上げます。

日本医師会生涯教育講座1.5単位
カリキュラムコード:2 継続的な学習と臨床能力の保持、42胸痛、60腰痛

 

日 時 : 2015年6月12日(金)18:45~20:30
場 所 : 済生会福岡総合病院 14階 会議室
テーマ : 大動脈瘤、大動脈解離の発生メカニズムに迫る
司 会 : 済生会福岡総合病院 循環器内科 副院長 山本雄祐 医師
      済生会福岡総合病院 循環器内科 主任部長 岡部眞典 医師

19:00~19:15 『大動脈疾患のClinical Review』
 済生会福岡総合病院 心臓血管・大動脈センター 外科主任部長 伊東啓行
19:15~19:45 『サイクロフィリンAによる大動脈瘤の発症機構と臨床応用の可能性』
 東北大学病院 循環器内科・臨床医学開発室 准教授 佐藤公雄 先生
19:45~20:15 『大動脈を守るメカニズム』
 久留米大学 循環器病研究所 教授 青木浩樹 先生
20:15~20:30  Free Discussion

今回のテーマは「大動脈疾患」です。

大動脈疾患といえば大動脈瘤や大動脈解離が代表的なものです。労作性狭心症の場合は元来一層の内膜が肥厚し血管内腔が狭小化する内膜の病気ですが、大動脈瘤の場合は血管の支持組織が脆弱となる、いわば中膜の病気です。今回は、大動脈疾患がどのようにしてできるのか?発症を予防する手立てはあるのか?について考えてみたいと思います。

すべての生体組織は細胞とそれをとりまく細胞外マトリックスで構成されています。大動脈は常に強い物理的ストレスにさらされているので、その構造を支持するマトリックスの役割は重要です。細胞外マトリックスには糖タンパク、コラーゲンなど多くの分子があります。この中に、最近注目されmatricellular蛋白と呼ばれているものがあります。主に組織リモデリングに伴って発現し細胞と細胞外マトリックスをつなぐメディエーターとして機能する特別なマトリックス分子です。特徴は、(1)線維や基底膜のような構造物を作らず、(2)細胞表面受容体、他のマトリックス分子、サイトカイン、プロテアーゼなどと相互作用し特にマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を制御する、(3)細胞同士の接着を緩め、発生期の組織形成、がんの浸潤、組織障害後の修復などにおいて発現する、などがあげられます。つまり、組織構築の改変を制御する分子群といえます。この代表的な蛋白分子としてサイクロフィリンAとテネイシンCが知られています。

大動脈瘤はほとんど無症状ですが危険因子は、男性、加齢、たばこです。高血圧で物理的に瘤になるというより根本は支持組織の劣化が原因です。発生メカニズムとしては酸化ストレス、炎症、マトリックス分解がキーワードですが、佐藤公雄先生らによってサイクロフィリンAによる発症機構がNature Medcine15:649-656 (2009)に発表されました。サイクロフィリンAは血管平滑筋で発現し酸化ストレスによって分泌され大動脈瘤形成に寄与するといわれています。1種類の蛋白除去で瘤形成が阻止されるかわかりませんが、抗サイクロフィリンA薬ができれば希望があります。

一方、大動脈解離の原因は内中膜の破綻ですが発症メカニズムはあまり知られていません。動脈硬化だけが原因ではなくマルファンなど遺伝性の結合組織疾患によるものも10%ぐらいあります。病理学的には大動脈に何らかの慢性の炎症が先行して、ある日血行動態のストレスが解離を引き起こすといわれています。動物実験で、この大動脈解離をテネイシンCで予防できる可能性が2014年Scientific Reports doi:10,1038/srep04051に青木浩樹先生らによって発表されました。テネイシンCは、もともとがん間質に特異的な分子として発見されましたが、正常組織にはほとんど発現せず炎症、組織障害部位に限って高発現し組織構築改変で重要な役割を演じていることがわかってきています。従って、バイオマーカーや分子イメージングなど診断にも役立ち、かつ分子機能を利用したデバイス開発など治療にも臨床応用が期待されています。

今回の講師には東北大学の佐藤公雄先生、久留米大学の青木浩樹先生とお二人のNature authorsに加え、臨床のreviewを当院の伊東啓行先生にお願いしております。ご興味のある先生方の多数の参加をお願いいたします。

※地図などを印刷した先生方のクリニックのパンフレットがございましたら 10 部ほどセミナーにお越しの際受付にお渡し頂けたら幸いに存じます。患者様を逆紹介する際使用させていただきたく存じます。

21世紀循環器セミナー代表世話人 済生会福岡総合病院 副院長 山本雄祐

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